インクルーシブな住まい・職場

働く人の心と体を支える色・素材選び:インクルーシブオフィスデザインの実践事例

Tags: インクルーシブデザイン, オフィスデザイン, 色彩心理, 素材選び, 従業員満足度

なぜ、オフィスにおける色と素材選びが重要なのでしょうか?

従業員が日々多くの時間を過ごすオフィス空間は、単に業務を行う場所にとどまらず、働く人の心身の状態や生産性に深く影響を与えます。特に、空間を構成する色や素材は、私たちの感覚や心理に無意識のうちに作用し、快適性、集中力、安心感などを左右します。

企業の総務部門の皆様にとって、「多様な従業員が働きやすいオフィス環境を実現する」という目標は重要である一方、大規模な改修にはコストや時間といった課題が伴う場合も少なくありません。しかし、オフィスデザインの中でも比較的取り組みやすい「色」や「素材」の選択を見直すことは、インクルーシブな環境づくりに向けた有効な第一歩となり得ます。

この記事では、色や素材が働く人にどのような影響を与えるのか、そしてそれらをどのように活用すれば、多様な従業員にとってより快適で生産性の高いインクルーシブなオフィス空間を実現できるのかを、具体的な事例を交えてご紹介します。

色と素材が働く人の心身に与える影響

色は感情や心理状態に直接的に影響を与えます。例えば、青や緑といった寒色系はリラックスや集中を促す効果がある一方、赤やオレンジといった暖色系は活気やコミュニケーションを活性化させる傾向があります。また、ベージュやグレーなどの中間色は落ち着きや安定感をもたらします。

素材も同様に、触覚だけでなく視覚や聴覚、嗅覚にも影響を与えます。自然素材(木、石、布)は温かみや安心感を与え、ストレス軽減に繋がると言われています。一方、無機質な素材(金属、ガラス)は洗練された印象を与える反面、冷たい、硬いといった感覚をもたらすこともあります。また、素材の質感や加工によっては、特定の光の反射や音の響き方にも影響し、視覚過敏や聴覚過敏のある方にとっては不快感の原因となる可能性も否定できません。

インクルーシブデザインの観点からは、これらの色や素材が多様な従業員、例えば感覚過敏を持つ方、高齢者、視覚特性を持つ方、特定の疾患がある方、あるいは単に気分によって落ち着いた環境を求める方など、一人ひとりの感じ方やニーズにどのように応えられるかが重要になります。

色と素材を活用したインクルーシブオフィスデザインの実践事例

具体的な事例を通して、色や素材選びがインクルーシブなオフィス環境にどう貢献するかを見ていきましょう。

事例1:リラックスとリフレッシュを促す休憩スペース

事例2:集中力を高める執務エリア・集中ブース

事例3:安全で分かりやすい移動空間・共有スペース

インクルーシブな色・素材選びを進めるためのポイント

インクルーシブな色・素材選びは、単にカタログから好きなものを選ぶことではありません。多様な従業員のニーズを理解し、計画的に進めることが重要です。

まとめ:色と素材が拓く、より良いオフィス環境

オフィスにおける色と素材選びは、単なる美的な要素ではありません。それは、多様な従業員一人ひとりの感覚、心理、生理に深く寄り添い、その働きやすさやウェルビーイングを直接的に支える重要なデザイン要素です。

インクルーシブな視点を持って色や素材を見直すことは、従業員の集中力を高め、リラックス効果をもたらし、安全性を向上させ、ひいては組織全体の生産性向上や従業員エンゲージメント強化に貢献します。大規模な改修が難しい場合でも、部分的な改善や段階的な導入を通じて、確実に一歩ずつ、よりインクルーシブなオフィス環境へと近づけることが可能です。

ぜひ、貴社のオフィスを構成する色や素材に注目し、働く人の心と体を支える空間づくりに向けて、具体的な一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。